天然記念物になった珍しい花
菰野町田光のシデコブシ

 菰野町田光地域にシデコブシと言う珍しい植物が自生しており、春四月の初めに桜より早く、葉が出る前に薄いピンクの花が咲きます。近付くと八重桜のようですが、手の平を広げたような花びらは大きく、直径は7〜8pもあります。
 このシデコブシは、モクレン科のモクレン、野山に咲き歌にも出てくる白い花コブシの仲間です。
 しかしこのシデコブシは、愛知、岐阜、三重県の限られた地域にのみ見られる植物で、特に湿原地域を好んで分布(自生)しています。日本列島の造成時代と考えられている鮮新世時代のこの地域の地質から種子が発見され、かつてこの地域に大きな湿原があったことが示されました。
 このシデコブシは樹齢20〜30年になると7〜8mの大木になりますが、隣の四日市市川島町でも見られるほか、三重県内では自生しておりません。
 菰野町田光のシデコブシは約500本もあり、その周辺には東海地方に限って分布する湿原植物であるシラタマホシクサ、ミカワバイケイソウや、氷期遺存植物とされるカザグルマ、ミミカキグサ、モウセンゴケなども見られました。
 地元ではこの貴重な環境と植物群落を、学術的にも大切な遺産として保護保存を図り、平成17年3月2日に国指定天然記念物として国の保護指定地に指定されました。その面積は37,959.62uになります。
 平成18年度に改めてこの地域の自然環境の調査が行われ、貴重な植物以外の地質地形、植物、動物、昆虫の調査が平成19年11月まで引き続き実施されることになりました。この調査はこの地域の基本調査として位置付けられ、この地域がいつまでもシデコブシや沢山の湿原植物が自生し、保護保存が図られることを目的としたものです。
 ここは昔、大半が水田でしたが、休耕田になったところもあり、ササの仲間をはじめ色々な植物が侵入している模様で、少しずつ湿原植物が住みにくくなって来ているようです。現在、地元の協力を得ながら、現地のササの刈取を進めています。また平成17年には、この地域内の西端にあり、この地域の湿原を保つ「楠根溜」という溜め池にブラックバスが沢山生息していることが判り、地元の協力で水を抜き、専門家も参加して沢山捕獲されたブラックバスを調査、分析してもらいました。
その時にはブラックバスの目を逃れ泥の中にいた夥しいトンボのヤゴ(オオヤマトンボ、コシアキトンボなどの6種類1600匹のヤゴ)を採集しました。このヤゴは2日後、水のない「楠根溜」には返さず、菰野町役場の通称「トンボ池」に放流しました。
 この国指定天然記念物「田光のシデコブシ及び湿地植物群落」を菰野町の誇る大切な遺産として保護保存をはかり、いつまでもシデコブシの花が楽しめる地域として残したいと思います。
                  2007年4月     文責 市橋 甫