渓流取水は、木曽川水系牧田川および三重県北勢部の鈴鹿山麓の中小河川から取水し、導水路および幹線水路により中里貯水池および宮川・菰野・加佐登の各調整池へ導水するものです。
 渓流取水にあたっては、下流の既得利水者の権利を侵害しないよう、図に示す取水制限流量を優先的、かつ、確実に流下させることおよび最大取水量を自動的に規制させることを基本としています。
 各渓流は、流域面積が小さく、河床勾配が急なため、洪水到達時間および減水時間が非常に短く、また、土砂・礫・立木等の流下が激しい。このため、取水堰、集水路の型式選定にあたっては、模型実験等による検討を行って決定しました。
 渓流取水工については、図に示すように、河川に設けた取水堰(バースクリーン)で取水し、取水制限流量を下回る場合は河川に戻し、取水制限流量を超える場合に、その超える流量の範囲内の水を導水路に導入します。
 最大取水量を超える水は、最大取水量規制施設により自動的に規制され、余水吐から河川に戻されます。
 取水工の型式には、チロル型式、バックストリーム型式およびチロルU型式があり、その特徴と機能は次のとおりで、図に型式を示します。

@ チロル型式
 オーストリアのチロル地方に古くから見られるタイプで、取水堰の天端下流傾斜部に、バースクリーンを適切な傾斜角、長さおよび間隔で取付け、バーのすき問から落下する水を集水路で受ける型式です。有効落差を得るために既設床止工等を利用し、その直下流に設置します。
 この型式は、河川が整備されており、河道およびみお筋が安定しているところで、流出土砂や砂レキが比較的少ない河川に適しているとされています。
 有効落差は、比較的低く1.0〜2.0m程度で、堰高は、河川の形状、集水路の勾配および取水制限流量放水路の位置等により決定されます。

Aバックストリーム型式
 取水堰の下流傾斜部にバースクリーンを並べ、バーのすき間から落下する水および水クッション部の背水を集水路に受ける型式です。
 この型式は、チロル型式の難点である礫、浮遊物によるバーの目詰まりが起こりにくい構造としたものであり、河道、みお筋が不安定なところでも取水機能に大きな障害とならないので、流出土砂や砂礫の多い河川に適しているとされています。
 有効落差は、チロル型式に比べて高くとる必要があり、堰高は河川の地形、集水路の勾配および取水制限流量放水路の位置等により決定されます。

BチロルU型式
 暫定管理の経験から、バースクリーンの目詰まりによる取水効率を低下させないため明治大学農学部山本光男教授が研究開発したもので、バースクリーンの取付け角度を45°とし、水クッション部を設けたチロル型式とバックストリーム型式の長所を兼ね備えています。

 各渓流取水工の諸元は、右表のとおりです。