木曽川水系工事実施基本計画では、基本高水のピーク流量毎秒8,000立方メートルに対し、上流ダムで毎秒500立方メートルを調節し、河道で毎秒7,500立方メートルを安全に流下させる計画となっており、これに基づいて改修が進められていました。
の3つが考えられます。
しかし、堤防嵩上げ案は高い水位で水を流すことになるため、万一破堤したときの被害を大きくするとともに新幹線など多くの橋梁を架け替えなければなりません。
引堤案では、川沿いの貴重な土地や多くの家屋移転を伴うことになり、いずれの案も現実的ではありません。
このため河川の中で速やかに実施できる浚渫案が最も優れた方法といえます。そこで長良川下流部では川底を浚渫することにより、洪水を流下させるために必要な河積を確保しました。
昭和30年代からの地下水の大量の汲み上げにより発生した地盤沈下は、塩水を川の上流部へさらに呼び込んでしまうこととなり塩害を拡大させる結果となりました。
このため木曽三川河口部の長島町は塩水化した長良川の水や地下水を利用できなくなり、塩害のひどい農地は宅地などに転用されたりしました。
また、昭和40年代には、遠く木曽川上流部に水源を求め、木曽川大堰から導水することでかろうじて塩害をしのぐなど、多大な苦労を費やして対策をとり塩害を防いでいる状況です。
長良川河口堰運用開始以後は、堰上流域が淡水化され、長良川沿岸地点では地下水の塩分濃度は低下傾向にあります。
長良川のしゅんせつと塩水遡上の防止
ところが、長良川を計画どおり浚渫(しゅんせつ)して川底を全体に下げると、約15km付近のマウンドで止まっている塩水が、河口から約30kmまでそ上することが予測されます。
これに伴い今まで塩害のなかった地域においても河川水が塩水化し、河川から取水している用水が利用できなくなるばかりでなく、堤内地の地下水、土壌も時間の経過に伴い塩分化して、農地としての使用に影響が出るとともに将来の土地利用にも大きな制約が加わります。
長良川河口堰は、河口部で潮止めを行うことにより、このような塩害を事前に防止する役目を持っています。なお、マウンドのしゅんせつは平成9年7月末に完了しました。
※これまで掲載していた図に誤りがありましたので、長良川河口堰のリ-フレット「INFORMATION 長良川河口堰」に掲載している正しい図を、平成24年6月18日に掲載しました。
上空から見たブランケット
これにより、堰の上流では堰の完成前に比べ水位が上昇するため、その対策としてブランケット(高水敷の表面に厚さ60cm程度の粘性土を被覆したもの)や平面排水施設を整備しました。
ブランケット高水敷は長良川の堰地点から25km付近まで、堤防沿いに50mから70m幅で造成しました。
これによって平常時は川の流れを堤防から遠ざけ、また堤内側に設けた堤脚水路、承水路などとの組み合わせにより、浸透してくる水を安全に抜き、地下水位の上昇を防ぎます。また、ブランケットは洪水時には川の流れから堤防の基盤部を守るとともに、浸透に対する安全性の向上を図る役目を担っています。
なお、このブランケットは、ふだんは地域の人たちの憩の場として利用したり、豊かな自然環境を保全するための場となっています。