■沈水植物の琵琶湖全域調査結果

琵琶湖全域における沈水植物の分布を把握するために、1997年と1998年の2ヶ年をかけて第1回目の調査を行いました。また、2002年に第2回目を2007年に第3回目を、2013年に第4回目の全域調査を行いました。

●群落面積と分布図

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●沈水植物の各種優先順位と多く見られる種類

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群落面積と分布図

ここで示す「群落面積」とは、植物が実際に覆っている面積で、植物の分布面積に植被率(一定の面積内に植物が覆っている割合)を乗じて求めたものです。

1997~1998年

群落面積

分布図

水深別にみると、沈水植物群落の80%以上がB.S.L.±0~-5mの間でみられ、沈水植物の大部分が、B.S.L.-5mより浅い場所に生育していることがわかりました。

1997年群落面積のグラフ

分布図 南湖 全域
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2002

群落面積

分布図

1997、1998年と比べると、北湖、南湖で群落面積が増加しました。

2002年群落面積のグラフ

分布図 南湖 全域
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2007

群落面積

分布図

2002年と比べると、南湖では増加し、北湖と琵琶湖全体では減少する結果となりました。なお、1997年、1998年と比べると、北湖、南湖で増加しています。

水深別にみると、南湖の-4m~-5mの間の群落面積の増加がみられました。また、最も群落面積の多い水深帯は1997年にはB.S.L.-3.5m~-4.0m、2002年にはB.S.L.-4.0m~-4.5m、2007年にはB.S.L.-4.5m~-5.0mであり、経年的に深くなる傾向がみられました。これは南湖でB.S.L.-3.5m以深の深い箇所で群落面積が大幅に増加していることによるものと考えられます。

2007年群落面積のグラフ

分布図 南湖 全域
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2013

群落面積

分布図

2007年と比べると、北湖では増加し、南湖および琵琶湖全体で減少する結果となりました。分布図の変化を見ると、南湖においては群落面積が増加しているように見えますが、南湖における沈水植物の範囲は広がっていますが、植被率が全体的に低下しているため、南湖で群落面積が減少しています。
なお、1997年、1998年と比べると、北湖、南湖で増加しています。

水深別にみると、2007年と比べ特に南湖の-4m~-5mの間で群落面積の減少がみられました。また、最も群落面積の多い水深帯は1997年にはB.S.L.-3.5m~-4.0m、2002年にはB.S.L.-4.0m~-4.5m、2007年および2013年にはB.S.L.-4.5m~-5.0mであり、経年的に深くなる傾向がみられました。これは1997年から比べると、南湖でB.S.L.-3.5m以深の深い箇所で群落面積が大幅に増加していることによるものと考えられます。

2013年群落面積のグラフ

分布図 南湖 全域
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沈水植物の各種優先順位(1997年・2002年・2007年・2013年)

沈水植物各種の優占順位をみるために分布の広がりを、出現測線数で出現頻度を、出現区画数で量的な多さを被度合計で示しました。
各種が出現した測線数、出現区画数および各種の被度合計の順位は、夏季の結果を示しています。多くの在来種は年間最大現存数を示していると考えられますが、外来種のコカナダモは現存量ピークを過ぎた時期であり、またエビモは夏眠時期であるため、これらの種については過小評価している可能性があります。
1997年から2002年に増えた種はヒロハノエビモ、マツモ、オオカナダモなどで、逆に減った種はコカナダモ、エビモでした。
2002年から2007年にかけて、被度が増えた種はクロモ、ヒロハノエビモ、オオササエビモです。コカナダモは1997年に出現測線数が約80%で上位(4位)でしたが、2007年には12位となり、出現区画数と被度も同様に順位を下げ、分布域の減少もみられました。
2007年から2013年にかけて、被度が増えた種はヒロハノエビモ、オオササエビモ、イバラモです。反対に被度が低下した種は、センニンモ、オオカナダモ、コカナダモ、ヒロハノセンニンモでした。

沈水植物の優占順位

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琵琶湖の分布で多く見られる沈水植物



トチカガミ科 -クロモ Hydrocharitaceae -Elodea nuttallii

クロモの写真

全国で見られる多年生沈水植物。
葉は線形、葉縁には鋸葉がある。
2002年調査以降一番多く確認されている種であり、琵琶湖全域に分布。生育している水深帯や底質の範囲が広い。

ヒルムシロ科 - センニンモ Potamogetonaceae - Potamogeton maackianus

センニンモの写真

全国で見られる常緑性沈水植物。
葉は線形、先端は凸状となる。
2002年調査以降、クロモに次いで多く確認されており、琵琶湖全域に分布。幅広い水深帯と様々な底質に生育する。

アリノトウグサ科 -ホザキノフサモ Haloragaceae -Myriophyllum spicatum

ホザキノフサモの写真

中・富栄養化水域・汽水に生息。
葉は細かく分かれた羽根状。
出現区画数はクロモ、センニンモに次いで4番目に多い種で琵琶湖全域に分布しているが、大きな群落を作らず、株毎に点在するため、被度は低い。



トチカガミ科 - オオカナダモ Hydrocharitaceae -Elodea nuttallii

オオカナダモの写真

南米原産の常緑の沈水植物。
葉は広線形、冬期も枯れずに越年。
琵琶湖の広範囲で確認されるが、特に南湖で多い。B.S.L-3縲鰀-4mの比較的深いところで多く分布。

トチカガミ科 - コカナダモ Potamogetonaceae-Potamogeton biwaensis

コカナダモの写真

南米原産の常緑の沈水植物。
葉は広線形、冬期も枯れずに越年。
1997年の調査ではクロモ・センニンモに次いで、3番目に被度が高かったが、2002年調査では北湖・南湖共に減少した。また、2007年調査、2013年調査ではさらに減少した。ただし、コカナダモの繁茂時期は初夏であり、調査を実施している夏には減少傾向であることから、最も繁茂した時期に調査すると、もっと被度が高いと考えられる。



トチカガミ科 - ネジレモ Hydrocharitaceae - Vallisneria asiatica var.biwaensis

ネジレモの写真

琵琶湖固有の沈水植物。
葉は線形でリボン状。
琵琶湖のほぼ全域に分布。琵琶湖のほぼ全域に分布し、B.S.L-1~-2mの浅所の砂底、礫底で多く確認。2007年調査と2013年調査の被度の結果はほぼ同程度であり、分布の増加は特にみられなかった。

ヒルムシロ科 - サンネンモ Potamogetonaceae-Potamogeton biwaensis

サンネンモの写真

琵琶湖固有の沈水植物。
葉は無柄で線形。
個体数が非常に少なく、北湖北部に分布。個体数が少なく、主に北湖北部に分布していたが、2002年の調査で初めて南湖で個体が確認された。B.S.L-4.5~-6mの深い箇所で多く生育。2013年調査の被度の結果は2007年調査結果と比べ減少している。