本文へスキップ

一庫ダムTOP > 環境改善の取り組み

TEL. 一庫ダム管理所 072-794-6671

〒666-0153 兵庫県川西市一庫字唐松4-1

地域と協働した川づくりCONCEPT

ダムによる環境の課題

 これまで川だったところにダムができると、河川や周辺の環境が大きく変わります。一庫ダム完成後、ダム上流域・ダム貯水池・ダム下流域では下記のような課題が発生しました。

 
 ▲ダム建設による貯水池・河川環境の変化

○ダム上流域

 ダム上流の千軒地区にある関西電力の旧堰堤による魚類等の遡上障害がありました。
 2007年以降、魚類が遡上しやすいように堰堤に石積みをしていましたが、出水のたびに流されていました。
 現在は、堰堤の左岸側に魚道が設置され、魚類の上下流移動が可能になりました。

   
 ▲堰堤改修前(2007年1月)     ▲堰堤左岸側の石積み(2007年2月) ▲魚道設置後(2016年)

○ダム貯水池

 ダム貯水池内では、ブラックバスやブルーギルなどの外来魚が定着しており、国内在来魚の数が減少しました。

○ダム下流域

 ダムにより流況が安定し、土砂の供給がなくなったことで、河床の岩盤がむき出しになるアーマーコート化が進行し、魚類等が減少しました。
 また、猪名川本川合流点までの5km区間に減水区間が生じることがありました。
 さらに、出水時にゲート放流を行うにあたり、水温の低い貯水池内の底部から取水され、冷水温放流の原因となることがありました。


これまでの川の状態

 一庫ダムが建設された当時(昭和40年代〜50年代)は、猪名川は近畿圏では有数のアユ友釣り場でした。しかし、一庫大路次川にある一庫ダムの下流では、管理開始から20年ほど経つと、流況が安定し、上流からの土砂供給が途絶え、河床の岩盤がむき出しになるアーマーコート化が起こり、河川環境が悪化しました。これに伴い、アユをはじめ、魚類の姿が見られなくなりました。

 こうした状況に危機感を抱いた地元住民や猪名川漁業協同組合等とは、「アユの住む川」に戻そうという共通理念のもと、地域と一庫ダム管理所で協働して環境改善の取り組みを実施しています。

   
 ▲1982年(ダム建設当時)            ▲2002年(20年後)


1.ヨシの除去と玉石投入(2002年)

 水際の水の流れを良くするため、ヨシを根もとから除去し水辺を復元するとともに、魚類の隠れ場所を作るために玉石を投入しました。

 


2.土砂還元とフラッシュ放流(2003年〜)

 4月1日から洪水期(6月16日)に向け、貯水位を平常時最高貯水位(EL.149.0m)から洪水貯留準備水位(EL.135.3m)に低下させる「ドローダウン」期間に入ります。

 このドローダウン期間中に、一時的に放流量を通常の2倍程度に増やす「フラッシュ放流」を行います。毎年5月上旬に実施するフラッシュ放流では、同時に貯水池上流等に堆積している土砂を運搬し、放流量を増やしているダム下流の河川内へ投入し、玉石等に付着している藻類やゴミを洗い流し、河床をキレイにします。一時的に、濁水を生じさせますが、下流で取水する浄水場等の関係機関のご理解・ご協力のもと、2003(平成15)年から継続して実施しています。

 
  ▲2016年5月に実施したフラッシュ放流+土砂還元の状況       ▲フラッシュ放流前後の河床


○期待される効果

(1)川底の石に付着している古い藻類が剥がれ、新しい藻類(魚類等のえさ)が生える、世代交代を促すことができる。
(2)川底に中小の石や砂が動くことで、魚が卵を産む場所(魚類の産卵床)が改善される。
(3)藻食性のアユ等の生息場が整う。
(4)少ない水量では、川の一部に澱みができてしまうため、澱みを流して川をきれいにする。

 新たな土砂(砂礫)が供給されたことで、藻類の剥離・更新が進み、その場所でアユが藻をはむ様子が目視で確認されています。

3.弾力的管理試験(2006年〜)

 洪水期(6月16日〜10月15日)のうち6月16日〜7月15日までの1ヶ月間、洪水調節容量内の一部に貯留した流水を活用することにより、下流へ放流する放流量を増加させる取り組みを実施しています。これにより毎秒0.44m3/sの流量を増加し、低水時には畦野地点で約5cmの水位上昇を見込んでいます。また、2009年からはこの期間中に土砂を投入しないフラッシュ放流(4回)を計画し、その時の流況に応じて実施しています。


○期待される効果

(1)オイカワ、ヨシノボリ類の産卵期における必要流量を確保することで、これらの魚類の再生産が促進される。
(2)ダム上流の副次的効果として、貯水池内で約2.1haの水面面積増が見込め、水位低下速度の緩和により産卵床の干し上がりが少なくなる。

4.貯水池内の外来魚対策(2005年〜)

 4/1から洪水期(6/16)に向け、貯水位EL.149.0mから洪水貯留準備水位EL.135.3mに貯水位を低下させるドローダウン期間中を利用し、貯水池内に定置網を設置し、魚類調査を行っています。在来魚は計測後、再放流し、外来魚については貯水池外へ取り出しています。

 
 ▲定置網のイメージ図


 
 ▲(左)調査状況 (中)(右)在来魚は再放流


○期待される効果

(1)水位低下式定置網による魚類調査結果では、2005年度は貯水池内の約7割が外来魚だったが、直近では在来魚が多い年も現れ始めた。
(2)河川水辺の国勢調査(魚類)の結果では、対策を始めた2005年度は外来魚が4割を占めていたが、2007年度・2012年度調査では在来魚が96%を占めている。

5.川を耕し隊(2005年〜)

 貯水池に流入する田尻川、一庫大路次川では、アユが産卵する場所があります。毎年、10月中旬頃からアユが小石や砂礫の多い場所で産卵し、10日前後で孵化した孵仔魚は川の流れに身を任せて、ダム湖へ下ります。これら孵仔魚はダム湖を海に見立てて、貯水池内でプランクトンを摂食して成長し、春頃までに体長6cm程度に育ち、貯水池から河川へ遡上し、玉石等に付着する藻類を食べて体長20cm程度まで成長し、盛夏を迎えます。

 2005年から一庫ダムと猪名川漁業協同組合と協働で、一庫大路次川、田尻川のアユの産卵場において、鍬や鋤の道具を使って河床を耕す、「川を耕し隊」を行い、アユの産卵床の造成する活動を続けています。

   
 ▲川を耕し隊                    ▲一庫大路次川を遡上するアユ(猪名川漁協提供)