今回は一庫ダムの果たす3つの役割についておとどけします。
 この地に何故ダムが必要なのか。ダム完成以来猪名川流域はどのように変わったのかを探ります。



一庫大路次川の増水した水を洪水が過ぎるまで貯留し、
猪名川の洪水を軽減します。


流域約60万人の水道用水を下流で取水できるようにします。


猪名川の水を利用してきた水田および水道用水に渇水のときも
従来通り取水できるようにします。また、河川に生息する動植
物の保全に必要な流れを維持します。



洪水調節
 一庫ダムは100年に一回程度の頻度で起こるような大雨で河川に流入してくる量に対応するダムとして建設されました。しかし現在は、猪名川の現状の整備状況で被害が頻発する20年に一回程度の頻度で起こる中小洪水(戦後最大規模の昭和28年の洪水よりもやや大きい洪水)を対象にして洪水調節を行っています。
 現在の洪水調節計画では、ダムへの流出量が毎秒150立方mから洪水調節を開始し、計画高水流量の流入時点で、毎秒790立方mのうち、毎秒640立方mの洪水調節を行って、下流の高水流量を低減させるものです。
 洪水調節計画は将来、猪名川の河川改修の進捗状況にあわせて順次見直していきます。
洪水流量を軽減
 一庫ダムでは、管理開始後平成12年までの18年間に7回洪水があり、その都度管理規定に基づき洪水調節を行ってきました。管理開始後最大の出水であった昭和58年洪水では、川西市小戸地点で、ダムがない場合と比べて水位を低下させ浸水被害を軽減しましたが、新しい操作ルールではさらに低下させることができます。
一庫ダム洪水調節実績
原因
最大流入量
累計雨量(mm)
昭和58
9
台風10号 410.93 239
昭和61
7
前線 251.41 124
平成1
9
前線 285.86 200
平成2
9
台風19号 244.4 139
平成9
8
前線 238.03 181
平成10
9
台風7号 258.36 162
平成11
6
前線 297.82 168

水道用水の供給
一庫ダムで作られた水は、兵庫県(尼崎市・西宮市・伊丹市・宝塚市・川西市・猪名川町の5市1町)と池田市・豊能町などへ送られます。
水道用水の市町村別内訳
兵庫県水道用水
1.922
池田市水道用水
0.365
川西市水道用水
0.116
豊能町水道用水
0.097
2.500
渇水を軽減
渇水時、一庫ダムから供給される貯留水が下流の水量確保に大きく貢献してきました。特に昨年は平成6年を上廻る大渇水となり、渇水対策期間は8月12日から2月28日までの201日間に及びました。6月中旬には満水に近かったダムは、12月21日は貯水率が7.8%まで落ち、管理開始以降最低を記録しました。


既得取水の確保
 一庫ダムによって、猪名川沿岸の既成農地に対するかんがい用水等の補給、その他流水の正常な機能の維持と増進を可能にします。
水辺環境の保全
 また、治水・利水の利用だけでなく、知明湖水面と周囲の自然が織り成す景観や環境の保全も重要なダム管理と位置づけ、流域住民の協力を得ながら、さまざまな河川環境保全に取り組んでいます。
一庫ダム周辺道路
クリーンアップ作戦


ダム下流での水とのふれあい
「マス釣り大会」

猪名川の愛護セミナー
「水生生物調査」


 ダム計画、工事着手(昭和52年5月)
 についてお届けします。お楽しみに。
参考図書 一庫ダム:水資源開発公団一庫ダム建設所監修
Hitokura Dam's Wish 知明湖 流域の暮らしとともに:水資源開発公団一庫ダム管理所発行