筑後大堰の役割
   
洪水をふせぐ

漢字の読み
筑後大堰ができるまえには、上流のほうに上鶴床固めという、固定式の堰がつくられていました。この堰があることで、あるていどの水位と水の量がたもたれ、その水をのみ水や農業などに利用することができました。
しかし、この固定堰には大きな問題がありました。
大雨により水位が大きく上がるため、いままでせきとめていた水が堤防の外にどっとあふれ、洪水となって大きな被害をおこすことがたびたび発生したのです。
とくに昭和28年6月の洪水は、被害者が54万人にもなりました。
このような洪水をふせぐため、上流の上鶴床固めを撤去し、約500m下流に筑後大堰をつくりました。
筑後大堰は、可動堰といって、ゲート(水をせきとめる板)を上げたり、下げたりすることによって、ながれる水の量をかえることができます。
大雨のときには、水をとめないでどんどんながすことによって、洪水をおこさないようにするのです。
また、河道整備といって、河床をけずり、堤防をつくって、大雨でより多くの水がながれてもだいじょうぶなようにしました。
専門知識 筑後大堰地点の計画高水流量 9,000m3/s
   
 
 
塩害の防除

漢字の読み
筑後大堰がつくられたあたりは、感潮域といって有明海の干潮、満潮の影響で水位の差がいちばん大きいときで3mにもなります。
筑後大堰下流域でよく見られた淡水取水(アオしゅすい)は、満潮になると海水が川をのぼってくるため、川の水がおしあげられ、それを用水路にとりいれていました。
その水は農業に利用されましたが、塩分が多くまじり、作物をそだてるのによい水ではありませんでした。
筑後大堰と筑後川下流用水事業ができてからは、満潮の力がなくても、水位が一定にたもたれることによって、川の真水を堰上流から用水路にとりいれることができるようになりました。
筑後大堰は、ふだんは、上流がわの水位を、下流がわよりも高くたもつことによって、海水が上がってくるのを、水の圧力でふせぐことができます。
満潮の影響でどうしても下流がわの水のほうが上流がわより高くなりそうなときには、ゲートをぜんぶしめて、逆流をふせぎます。
専門知識 筑後川下流用水事業
福岡県及び佐賀県の筑後川下流地区約34,800haの農地に筑後川から導水することにより、国営筑後川下流土地改良事業、県営ほ場事業等と相まって、地区内に散在するクリークの統廃合による大規模な用排水系統の再編成、淡水取水の合理化、用水不足の解消を図ろうとする事業。
   
 
 
新規水道用水の確保

漢字のよみ
筑後大堰ができたことにより、その上流がわの小森野堰と、宝満川の下野堰までの間は、貯水域としてたくさんの量の水をためておくことができるようになりました。
ここでは最低でも標高+2.44mの水位がたもたれ、+3.15mを満水の状態としています。
そして+2.44mよりも水位が高ければ、その分の水を利用できるというふうに、とりきめています。
これはつまり、満水のときには、ひろい貯水域ぜんたいの71cmの高さの水が、水道水などにつかえるということです。
そのぶんの水の量は93万m3にもなり、そこから、筑後川からかなりはなれた福岡県、佐賀県の都市部へも、あらたに水を供給できるようになりました。
こうしてわりあてられた水の量は最大で毎秒0.35m3で、さらに各地区ごとにわりあてがきめられました。
1)福岡地区水道企業団    最大0.076m3/s(秒)
2)福岡県南広域水道企業団 最大0.157m3/s
3) 佐賀東部水道企業団    最大0.117m3/s
このようにして、それまで水をひいていなかった地域へも水がながれて行くようになりましたが、もともと水を利用していた地域の人びとがこまることのないように注意しています。
 
 
取水位の安定

漢字のよみ
水道用水や農業用水を、ダムや河の貯水域から用水路にひきこむことを取水といいます。
ダムや河の水位が低くなっていると、そこから用水路に水をひきこむことができなくなります。
筑後大堰の貯水域では最低でも標高+2.44mの水位がたも たれるので、ここから福岡県、佐賀県の都市部に取水する水道用水や、筑後川下流のかんがい用水は、いつも安定的に取水できます。