御在所岳の樹氷と霧氷

 鈴鹿山脈の主峰御在所岳は、海抜1212mの山で、麓の四日市市に比べ8度から10度も気温が低く、夏が短く冬が長い県内では寒冷地の一つに上げられます。
 麓の湯の山温泉に紅葉が見られる11月に入ると、シベリア大陸に発生した高気圧が冬型の気圧配置をつくり、何度も日本列島に覆い被さるように寒気団を持ち込み、鈴鹿山脈は冷え始めます。その上空には−40℃の厳しい寒気団もあります。
 この時期の御在所岳は、初雪、初冠雪が見られ、紅葉が終わり木々も葉が落ちて枝ばかりの樹林となります。
 山の上の気温は寒気団の影響を受け、−5℃前後までどんどん下がって過冷却状態となり、山の上にある雲は霧状から氷結して寒い北風で樹林の枝に叩きつけられ、結晶化していきます。枝に美しい氷の結晶が出来、伸びていく方向が風上で、枝の見える所が風下になります。これが冬の花「霧氷」です。
 霧氷は気温の下がる夜間に作られます。翌朝ロープウエィに乗って御在所岳の広場で見られる霧氷林は下界では想像できない。神秘的でファンタジックな素晴らしい自然の作品です。
 さらに雪が積もり、厳しい大陸からの寒気団が続いて寒い北風を持ってくると雪が過冷却状態で氷結し「樹氷」になります。
 「樹氷」は「霧氷」とは別の雪の世界に見られ、太い枝、細い枝に付着した雪の結晶が、風上に向かって3〜5pまで伸びて表現出来ない不思議でファンタジックな世界を見せてくれます(これをエビのシッポと言う)。特に晴れた青空、太陽の逆光に浮き出された樹氷林は白銀の世界で別の世界を作ります。結晶は風に揺れて「カサコソ」と神秘的な囁きになって何処からともなく聞こえてくるようです。
 ぜひ見てほしい神秘的な樹氷の世界です。ただし気温は−10℃前後になります。
 なお「霧氷」と「樹氷」を分けて表現しましたが、広い意味では「霧氷」も「樹氷」に含まれ、さらには冬季に雨が急激な低温下と風を受け、枝に氷結する「雨氷」も見られます。
 また「樹氷」には、東北地方の蔵王などの針葉樹に出来る豪快な「樹氷」モンスターと、中部・関西地方の落葉樹に出来る繊細な「樹氷」と2つの形があります。
 御在所岳の「霧氷」は11月と3月の積雪のない時期、「樹氷」は12月から2月の雪の多い時期、シベリアからの高気圧が発達し大きな寒気団が日本列島に覆いかぶさった時によく見られます。現地ロープウェイの事務所へ確認の上でお出かけ下さい。