長良川河口堰が計画された昭和38年より4年余りにわたり、建設省(現国土交通省)の委託により約90名の最高レベルの学識経験者からなる調査団(団長:故小泉清明信州大学教授)により、長良川河口堰に係わる環境影響調査が、現在の長良川河口堰と同じ治水・利水計画を前提に実施されました。
KST調査の特色は次のとおりです。
長良川河口ぜき建設計画が確定した以降も、特に魚類等については、KST調査の結果を踏まえた影響軽減のための対策に関する研究を岐阜県水産試験場、岐阜大学等に委託して実施し、新たな魚道やアユ・アマゴの人工種苗生産技術等を開発するなど大きな成果をあげました。さらに、幅広い環境への影響の把握を目的として、主にブランケット工(高水敷造成)の着工前後(昭和40年代後半から50年代前半にかけて)、せき本体着工前(昭和50年代後半から60年代前半にかけて)等に幅広く一般的な項目について調査を実施しました。また、平成2年12月の「長良川河口ぜき問題に関する環境庁長官の見解」を踏まえて、建設省及び水資源開発公団が従来より実施してきた環境調査の内容及び保全対策について、建設省、環境庁の両省庁間で点検を行い、その結果、水質への影響、カジカ類等の回遊性魚類への影響、今後改変を予定している高水敷における貴重な動植物への影響の3項目の「追加調査」を平成3年度に実施しました。同時にせき本体着工後の状況を把握するため、平成2年12月から平成4年1月にかけて長良川の河口から約30km(陸上動物については、背割堤の木曽川及び揖斐川側も含む)の区間において、幅広く環境調査を実施しました。
長良川河口ぜき建設事業は、昭和63年からせき本体工事に着工し、平成5年度末までにゲートの据付けを完了してせき本体は運用が可能となるまで建設が進みました。このように新たな段階を迎え、実際にゲート操作を行い、平成6年度1年間かけて防災、環境、塩分等の調査を実施しました。主な調査の内容は、次のとおりです。
調査は学識経験者からなる「長良川河口ぜき調査委員会」の指導・助言をえながら、一般に公開で行い、調査結果をその都度公表しました。
長良川の河川環境の保全を図りつつ、河口堰がその本来の目的を達成できるよう、平成7年度からの5年間にわたり学識経験者の指導・助言を得ながら、運用後の環境の変化を把握し、環境保全対策の効果を確認するための調査(モニタリング)をしつつ、河口堰のより適切な運用に努めてきました。実施したモニタリングの主な内容は、次のとおりです。
調査は学識経験者からなる「長良川河口堰モニタリング委員会」の指導・助言をえながら、一般に公開で行い、調査結果を毎年「長良川河口堰モニタリング年報」として公表しました。
モニタリング委員会は当初の目的は概ね達成されたとして、引き続き河口堰を適切に運用していくために必要な当面のモニタリングの方向について提言を行い、平成12年3月に解散されました。
平成12年度からは、モニタリングについての提言に基づき、引き続きモニタリングを実施するとともに、中部地方ダム・河口堰管理フォローアップ委員会内に新たに発足した「堰部会」において審議されてきました。
管理開始から10年目にあたる平成16年度には、モニタリングによる調査結果を定期報告書にとりまとめ、フォローアップ委員会の「堰部会」での審議を受けました。
平成17年度からは、フォローアップ委員会(本会)で審議されており、平成22年度に行われた管理状況・調査結果の定期報告書(案)の審議では、「環境への影響等についても堰運用前後で環境に一定の変化はあったものの近年、調査結果は概ね安定した推移を示していることから、適切に管理運用されている。」ことが確認されました。
国土交通省中部地方整備局と水資源機構中部支社では、中部地方ダム等管理フォローアップ委員会(堰部会)の閉会にあたり、長良川河口堰で長年にわたり実施蓄積された環境調査の概要を「長良川河口堰環境調査誌」として整理・とりまとめしました。
現在、「アクアプラザながら」で閲覧することができます。あわせて、国土交通省中部地方整備局と水資源機構中部支社においても閲覧を行っております。
※「アクアプラザながら」では、「長良川河口堰環境調査誌」に加えて、平成6年度以降の調査報告書等も閲覧できます。