榎木という所は、昔からよくかんばつになり、晴天が続くと、稲がかれてお米がとれないことがたびたびでした。村人は遠い所から水をとるために長い道のりを通わなければなりませんでした。とくに川に橋がかかっていなくて、大変不便でした。
ある年、村一番の力持ちが、浄願寺の庭にある石橋をかついで川にかけました。村人はたいへん喜びましたが、どうしたことか、夜に橋を渡ると「いのう、いのう」と泣く声が聞こえるのです。村人はお寺の仏様を恋しがって泣くのだと思い、橋をもとの浄願寺にかえしました。今もこの橋のことを「浄願寺のいのういのう橋」と呼んでいます。