むかし、相撲庭(すまいにわ)というところに、夏の暑い昼過ぎ、お坊さんがやってきました。ずいぶん疲れた様子で、裏口でお米をといでいる老婆に「まことにすまんが、水をいっぱいくださらんか。」と頼みました。老婆は「このあたりは水がなくて困っています。これでもよかったら」とお米のとぎ汁を差し出しました。
一度使った水を何度も使っているときいたお坊さんは、「お礼に水がでるようにしてあげましょう。」と持っていたつえを土にさして円をかき、トントンとたたきました。そうすると不思議にもそこから美しい水が噴き出してきました。
この美しい水は絶えるがことなく、夏の日照りも心配しなくてよくなりました。後にこのお坊さんが有名な弘法大師であることが分かりました。