昔々、大きな溜池(ためいけ)がありました。その溜池はすり鉢のように中心部が深く、青々と水がたたえられ、田畑を潤していました。ところが長い年月の間に土砂が流れ込んでいつしか浅くなってきました。
ある日、一日の仕事を終えたきこりのおじいさんが山から降りてきましたら、溜池の辺りから見なれない美しい一人の娘が、一升徳利を抱えて歩いてくるのに出会いました。おじいさんが「今頃どこへいくのかい。」と尋ねましたら、娘は悲しそうに「住み慣れた所に水がなくなるので引っ越します。」といって、姿を消しました。
それからまもなく溜池の水がかれてしまい、娘は池の主で別の溜池に移られたのであろうと伝えられています。