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【番外編その2】吉野川橋りょう(JR高徳線)のはなし

 徳島市には、四国で一番長い鉄道橋があります。その橋とは、吉野川に架かる、JR高徳線の『吉野川橋りょう』で、橋の長さは949メートル。これはもう、徳島に来たら、旧吉野川河口堰と今切川河口堰を見た後、吉野川橋りょうを見に行くしかありません。
 今切川河口堰から、吉野川橋りょうが望める、徳島市吉野川北岸運動広場まで、約2.5キロメートルの距離です。
 
吉野川橋りょう
 

高徳線を走る特急うずしお(後方左手に眉山が見えます)

 JR高徳線は、高松市と徳島市の間(74㎞)を結ぶ鉄道路線で、1923年(大正12年)に着工して1935年(昭和10年)3月に全線が開通し、2020年(令和2年)現在で全線開通から85年が経過しています。
 吉野川橋りょうは、1934年(昭和9年)に完成し、当時、全国で第5位の長大鉄道橋だったそうです。

 吉野川橋りょうは、「3径間連続平行弦鋼ワーレントラス橋」4連と、両端に配置された「単純平行弦鋼ワーレントラス橋」2連で構成されています。
 この3径間の連続トラス橋は、日本の鉄道橋では吉野川橋りょうで初めて採用され、そしてこの連続構造の技術は、実にこの約30年後に建設される東海道新幹線の橋梁建設技術へとつながっていくことになります。

 
3経間連続トラスの様子

 この吉野川橋りょうには、さまざまな架橋の技術が駆使されています。
 前述したとおり、3径間の連続トラス橋とすることにより、同一構造での単純トラス橋よりも支間長を長くすることができるため、橋脚の数を減らすことができます。
 川の流れを阻害する橋脚は少ない方が良いので、治水上も有効となります。また、鋼材が軽量化されるとともに、上部のトラス構造部分の架設は、トラス構造の上部(上弦材)が平らになっているので、これを利用し、なんと上弦材をレールのように使用してその上にクレーン車が載って自走し、片持ち工法により徐々にトラス構造を張り出して延伸していく工法を用いました。
 これにより、吉野川の出水等の影響を受けることなく、架橋を計画的に進めることができました。 

 また、吉野川橋りょうの両端に配置されている単純トラス橋は、3径間連続トラス橋よりも部材の大きさが若干小さくなりますが、単純トラス橋の橋桁や、両橋を接続する橋脚の上部(支承部)で高さを調整することなどにより、見かけ上、段差が無く、全てのトラス橋がつながって美しく見えるように、景観にも配慮した構造となっています。 

 
単純トラス橋(右側)と3経間トラス橋(左側)の接合部の様子。橋脚上部での高さ調整の様子がよく見えます。
 

比較のために3経間トラス橋どうしの接合部の様子です。

 一方、これらのトラス橋(上部工)を支えている橋台2基及び橋脚13基(下部工)の地下部分には、鉄筋コンクリート造で幅4.2メートル、長さ9.5メートル、高さ18~21メートルの箱形の基礎構造物がそれぞれ埋設されていて、橋台や橋脚を支えています。
 橋脚及び橋台の設置箇所は、河床部分が軟弱地盤であったことから、これらの基礎構造物の建設には、当時最新工法で高度な技術を要するニューマチックケーソン(pneumatic caisson:圧搾空気潜函)工法が用いられました。(出典:とくしま橋ものがたり(徳島県))
 
 今、私たちが目にするのは、トラス橋と、橋台や橋脚だけなので、「その下はどうなっているのだろう?」とまではなかなか考えないものですが、見えない地下部分には、想像以上の構造物が造られていることがあります。
 普段目にできない基礎部分にも目を向けて考えてみると、面白いかもしれませんね。
 
 

 旧吉野川河口堰および今切川河口堰にお越しの際は、吉野川の散策がてら是非お訪ねください。

   
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